ご安全に!
今年2024年1月20日に、小型月着陸実証機SLIMが月面へのピンポイント着陸に成功しました。月面の特定の場所に誤差100mで着陸するというのは技術的に最高度のもので、世界初の偉業となりました。大阪冶金はこのSLIMの中心に備えられたチタン燃料タンクを担当しました。ブログやYouTube、TVのニュースで既にご存知の方もおられると思います。
今回、SLIMの話からブログを始めたのは、私が「モノづくり」にこだわる理由の一つがここにあるからです。それは「モノづくり」にはワクワクする経験がある、ということです。この素晴らしさを皆さんにお伝えしたいと思います。
なぜ私が「モノづくり」にこだわるのか? 考えてみますと、その原点は大学時代にまで遡ります。私は関西大学でチタン研究の第一人者の亀井清先生に師事し、チタン合金材料の開発に挑戦しました。大学で亀井先生の「これから必ずチタンの時代が来る」という言葉に励まされて当時はまだ注目されていなかった「チタン」素材を研究テーマに選びました。
ところで、父の寺内要が創業した大阪冶金興業は、太平洋戦争が始まる直前の1941年10月に金属熱処理加工業を事業としていたことから、私は「金属」を学ぶことに決めていました。父の事業と先生の研究という2つの貴重な出会いが重なって私の中で一つに融合し、関西大学で約10年間、チタン合金材料の研究に取り組むことになったのです。
その期間、朝から晩まで研究に没頭し、帰宅するのは週に2日程度という毎日でしたが、なにより研究が楽しくて、充実した生活でした。この楽しいという感覚が「モノづくり」には何より大切だと思います。しかし、「モノづくり」は楽しいだけでは現実的ではありません。そこには「役に立つ」という社会貢献の意識が必要だと私は思います。現在、チタンは軽く耐久性が高い金属として注目されている素材です。
真空熱処理技術を発展させたMIMは、チタンなどの金属粉をプラスチックのように形成して焼き固める技術で、複雑形状の加工が難しい材料部品を低価格で量産できます。また、冒頭でお話ししたSLIMや宇宙ロケットの燃料タンク、自動車や船舶の部品など、高温下での高い耐久性が求められる製品などに技術が応用されています。さらに人工骨といった医療用品の製造にも取り組み、「モノづくり」の可能性を追求しています。このように当社の「モノづくり」の精神は、ますます進歩しています。
最後に私ごとになりますが、熱加工技術の実用化に関する研究実績が認められ68歳の時に関西大学で博士号を取得しました。亀井先生と出会い、父の仕事を受け継ぎ、不思議な縁に導かれてここまで来ました。来年はいよいよ大阪・関西万博が開催されます。当社は「モノづくり」の精神を活かした成果をお届けできるように準備を進めています。ご期待ください。
ご安全に!
ご健康に!